「ジャンニ・スキッキ」は、プッチーニによる「三部作」のひとつです。
「三部作」…「外套」「修道女アンジェリカ」「ジャンニ・スキッキ」
「三部作」は、内容の異なる三作品を一度に上演しようという企画のオペラでした。
初演は、三部作として一度に上演されましたが、現在では、三部作の中で「ジャンニ・スキッキ」が一番人気があり、単独で上演されることが多いです。「外套」「修道女アンジェリカ」は重い内容のオペラですが、「ジャンニ・スキッキ」は喜劇です。
「ジャンニ・スキッキ」とは、田舎出身の切れ者のお父さんのこと。スキッキの娘は、とある一族の男との結婚を願っていますが、男の一族は鼻持ちなりません。スキッキが機転を利かせて、男の一族に起こった遺産騒動を解決、娘の結婚もうまくいかせます。
見どころとしては、スキッキの娘ラウレッタが歌う「私のお父さん」O mio babbino caroが有名です。
オペラ「ジャンニ・スキッキ」の相関図

オペラ「ジャンニ・スキッキ」の登場人物
スキッキ | 機転の利く、知恵者 | バリトン |
ラウレッタ | スキッキの娘 | ソプラノ |
リヌッチョ | ツィータの甥 | テノール |
ツィータ | ブオーゾの従妹 | アルト | |
ゲラルド | ブオーゾの甥 | テノール | |
ネッラ | ゲラルドの妻 | ソプラノ | |
シーニャ | ブオーゾの義兄 | バス | |
シモーネ | ブオーゾの従弟 | バス | |
マルコ | シモーネの息子 | バリトン | |
チェスカ | マルコの妻 | メゾソプラノ |
オペラ「ジャンニ・スキッキ」の基本情報
- 題名 Gianni Schicchi ジャンニ・スキッキ
- 作曲 ジャコモ・プッチーニ
- 初演 1918年12月14日 ニューヨーク メトロポリタン劇場
- 原作 ダンテ・アリギエリ「神曲」の地獄篇第30章
- 台本 ジョヴァッキーノ・フォルツァーノ
- 言語 イタリア語
- 上演時間 全1幕 55分
オペラ「ジャンニ・スキッキ」の簡単なあらすじ
リヌッチョとラウレッタは恋人同士だが、彼の親族は二人の結婚に反対している。
大富豪のブオーゾが死んだ。彼は遺言で、すべてを修道院に寄付すると書いた。彼の遺産を欲しがっていた親族は、がっかりする。
リヌッチョの提案で、親族はスキッキに遺産を相続する方法はないかと尋ねる。スキッキは最初は断るが、娘のラウレッタのためならと協力する。スキッキは故人になりすまし、遺言書を書き換えることにする。
オペラ「ジャンニ・スキッキ」の解説

「ジャンニ・スキッキ」の舞台は、フィレンツェです。
ヴァル・デルサ…エルサ渓谷 val d’Elsa
ムジェッロ…深い森ムジェッロ Mugel selvoso
ふたつの地名は、オペラの中で出てくる歌「フィレンツェは花咲く木のように」の歌詞の中で出てくる場所です。
オペラ「ジャンニ・スキッキ」全1幕のあらすじ
フィレンツェの大金持ち、ブオーゾの寝室
1299年、フィレンツェの大金持ちブオーゾが亡くなり、親戚一同(リヌッチョと7人)が集まってきた。大げさに嘆き悲しんでいる。彼らの本当の関心はブオーゾの残した莫大な遺産だ。
親戚
「ブオーゾは自分が死んだら、全財産を修道院に寄付する」という、遺言状を書いた…らしいぞ。
親戚のひとりが聞いた町の噂話に、一同は仰天。
親戚
遺言状が公証人の手元にあれば、なにもできない。だが、この部屋の中に遺言状があれば、我々にも望みがある!
彼らは遺言状を求めて部屋の隅々まで探した。

あったぞ!ブオーゾの遺言状が!助かったぞ。皆さん、僕にご褒美をください。スキッキの娘、ラウレッタとの結婚を認めてくれますね?
親戚
そのことは後にしよう。今は遺言状が先だ。



すべてうまく終われば、好きに結婚すればいいわ。
リヌッチョとラウレッタの結婚…親戚の中で強く反対しているのは、ツィータ(リヌッチョの伯母)
見つけた遺言状は、親戚に取り上げられる。リヌッチョは、少年(親戚の子供)にこっそり頼む。



スキッキとラウレッタを呼んできて。
遺言状をみてみると、噂話通り「財産は修道院に寄付する」と書かれていた。落胆する親戚たち。



一人だけいるよ。この窮地を救えるのは、ジャンニ・スキッキ。
親戚
「ジャンニ・スキッキの名前は聞きたくない」
「スキッキが来たら、痛い目にあわせてやる」
「田舎から来た者と親戚になるなんていやだ」



スキッキは賢く頼りになる人だ。田舎出身だからと偏見はよくないよ。
フィレンツェは、花咲く木のように繁栄してきたんだ。新しい人たちを迎え入れて繁栄してきたんだ。新しい人、ジャンニ・スキッキを迎えよう。
「フィレンツェは花咲く木のように」Firenze è come un albero fiorito
「フィレンツェは花咲く木のように」Firenze è come un albero fiorito|ジャンニ・スキッキ
歌詞の中に、フィレンツェの名所や有名人の名前が出てきます。名所を写真で簡単に紹介。


皆はしぶしぶ、スキッキにこの問題について相談することにした。
スキッキとラウレッタが、やって来る。スキッキは、親戚がブオーゾの財産目当てだとわかっている。



お悔やみを…失うものがあれば、得られるものもある。遺産がね!



財産は修道院に寄付すると書かれていたのよ!
やっぱりあんたの話なんて聞きたくないわ。出てお行き!持参金なしに、あんたの娘とリヌッチョは結婚させないよ!
スキッキは怒って、ラウレッタを連れて帰ろうとする。リヌッチョは叔母のツィータに抗議する。



ちょっと待って。彼に遺言状を見てもらおう。
スキッキさん。僕とラウレッタを助けると思って、この問題を解決する驚きのアイデアを考えてください。



嫌だ、お断りだ。こいつらの懐に金が入るだけだ。



私のお父さん、彼が好きなの。もし結婚できなければ、橋から飛び降りるわ。どうか、お願い。
「私のお父さん」O mio babbino caro
「私のお父さん」O mio babbino caro|ジャンニ・スキッキ
ラウレッタが、お父さんのスキッキを説得して問題を解決してくれるように頼みます。





仕方がない。遺言状を見せてくれ。…これは難しい。いや、待てよ。…ラウレッタは外に行きなさい。



わかったわ。
スキッキは、ラウレッタを部屋の外に出させる。残ったのは、ブオーゾの親戚たちだけ。



ほかに、ブオーゾの死を知っている人は?
親戚
亡くなったことを知る人はいない。



それならば、男たちは遺体を隠せ。女たちはブオーゾのベッドを整えろ。
遺体を隠したり、部屋を薄暗くしている途中で、医者が訪問してくる。
親戚
うわ、医者が来たぞ。



誰か彼を少し引き留めてくれ。
数人が医者が部屋に入るのを引き留める。その間に部屋を整える。
医者
ブオーゾさん。体調は良いですか?



(ブオーゾのふり)ああ、もう寝るところなんだ。夕方に出直してくれ。
スキッキがブオーゾの声色をまねて、医者を帰らせる。



私はブオーゾにそっくりだったかね?
親戚
そっくりだ。



ブオーゾになりすまして、遺言状を作り替えてしまおう!
親戚
これで遺産が手に入る!!



公証人を呼びに行ってくる!
親戚
財産はどうやって分けようか?現金や土地、農園がたくさんある。



そして、遺産の目玉は、この家とラバと粉ひき場!
親戚
「一番年長だから、私がもらおう。」
「いやいや、それはダメよ。」
「自分だけ、得をしようとして!」



(この親戚は、いつまで仲良くやっていられるかな。)
親戚
「財産の分け方は、スキッキに任せよう。」
「それがいいな。」
スキッキのアイデアに浮かれるの親戚たちに、スキッキは釘を刺す。



皆さん、くれぐれもご注意を。告知が出ています。他人になりすまし、勝手に遺言状を書き換えた者とその共犯者たちは、手を切断され、フィレンツェを追放になります。
さらば、フィレンツェ、手のない腕で別れを告げよう。
「さらば、フィレンツェ」Prima un avvertimento
「さらば、フィレンツェ」Prima un avvertimento|ジャンニ・スキッキ
歌詞に出てくる「手のない腕」と「ギベリン」とは?


部屋を暗くして、スキッキがベッドに入ると、公証人たちが到着する。スキッキは財産を親戚たちに渡るように、遺言を言っていく。残るは、遺産の目玉の「家とラバと粉ひき場」になった。



家とラバと粉ひき場は、わしの親友のスキッキに。
親戚
(小声で)なんだって!許さない、スキッキ!
親戚らが怒りそうになるので、「さらばフィレンツェ」を歌う。



さらば、フィレンツェ、手のない腕で別れを告げよう。
親戚
…!!(遺言書の偽造がばれたら困る。)



最後に、ツィータや。公証人たちにお礼のお金を払ってくれ。



(公証人にお金を渡す)ご苦労様です。



もっと彼らにお礼をしてくれよ。ツィータ。
ツィータは仕方なく払う。公証人たちは帰っていく。
親戚
スキッキ、なんてことをしたんだ!



この家は私のものだ。みんな、出ていくんだな!
怒りながら出ていく親戚たち。一方でリヌッチョとラウレッタは幸せに浸る。スキッキが観客に向かって言う。



ブオーゾの遺産分けでよい方法が他にあるでしょうか。この奇抜な計画のために、私は地獄に落ちるでしょう。でも、皆様がお楽しみいただけたなら、お許しを!