簡単にわかる「ウェルテル」あらすじと相関図|マスネ

マスネのオペラ「ウェルテル」は、ゲーテの「若きウェルテルの悩み」を原作としています。

原作のもつ、叙情的な面と、マスネが作るフランス音楽の繊細な旋律が合わさったオペラです。原作「若きウェルテルの悩み」とは異なる、愛に悩む若者像、ウェルテルの姿を表現しています。

周囲から少し暗い男と思われている、詩人・ウェルテルと、母が亡くなり弟妹たちの面倒を見ているシャルロット。

二人は出会い、シャルロットは婚約者を選びます。そのことに絶望した、もともと厭世的なウェルテルが、死に向かっていく様が描かれているオペラです。

オペラ「ウェルテル」の見どころ、聴きどころとしては、「手紙の歌」Werther! Qui m’aurait dit…Ces lettres!、「オシアンの歌・春風よ、なぜ私を目覚めさせるのか」Pourquoi me réveiller, ô souffle du printemps? があります。

目次

オペラ「ウェルテル」の簡単なあらすじ

詩人のウェルテルは、シャルロットに一目惚れした。彼女は亡き母に代わり、家族の面倒をみている。彼女には亡き母が決めた婚約者がいる。彼女はウェルテルの愛の告白を断り、婚約者と結婚する。悲観的な性格のウェルテルは、死を選択する。

「ウェルテル」の相関図

オペラ「ウェルテル」の相関図
オペラ「ウェルテル」の相関図

「ウェルテル」の登場人物

ウェルテル詩人テノール
シャルロット大法官の娘メゾソプラノ
アルベールシャルロットの許婚バリトン
ソフィーシャルロットの妹ソプラノ
大法官シャルロットの父バス
シュミット大法官の友人テノール
ヨハン大法官の友人バス

「ウェルテル」の基本情報

  • 題名 Werther ウェルテル
  • 作曲 ジュール・マスネ
  • 初演 1892年2月16日 ウィーン宮廷歌劇場
  • 原作 ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ「若きウェルテルの悩み」
  • 台本 エドゥアール・ブロー、ポール・ミリエ、ジョルジュ・アルトマン
  • 言語 フランス語
  • 上演時間 2時間10分(第1幕45分 第2幕35分 第3幕30分 第4幕20分)

「ウェルテル」第1幕

前奏曲

フランクフルト近郊、大法官の家の庭

自然豊かな、のどかな家の庭。父である大法官と6人の子供たちが庭に集まっている。クリスマスの歌を歌う、子供たち。

大法官(父親)
もういい、もういい。今度はちゃんと歌いなさい。

子供たち
クリスマス、イエスが生まれ、ここに私たちの神が…

「合唱」Noël! Noël!

大法官(父親)
シャルロット姉さんが聞いているぞ。

子供たちが真面目に歌い始める。大法官を訪ねて、友人二人が訪問。

大法官の友人ら
上手に歌えているね。7月なのにクリスマスの歌を歌うなんて、大法官は準備がいいね。

大法官(父親)
きちんと歌えるようになるのは簡単ではないよ。

大法官の友人ら
シャルロットはどこにいる?

ソフィー(妹)
姉は舞踏会に行く準備中よ。

大法官(父親)
友人や親せきが集まる舞踏会がウェッツラーで行われるのだ。

大法官の友人ら
そういうことか。どうりで、コッフェルはフロックコートを着ているし、スタイナーは、醸造家の馬を確保したり、ホフマンは馬車を用意していたんだな。だが、ウェルテルは楽しそうにしていなかったな。

大法官(父親)
いい若者だよ。

大法官の友人ら
社交の場では感じが良くないだろうね。彼は陽気ではないから。

大法官(父親)
ウェルテルは大使館の仕事が約束されていると言われているよ。

大法官の友人ら
外交官だって?彼は社交には向かないだろう。それじゃ、あとで酒場で会おう。ところで、アルベールはいつ戻ってくるの?

大法官(父親)
わからない。仕事はうまくいっているそうだよ。

大法官の友人ら
アルベールはいい男だ。シャルロットとアルベールの結婚式には喜んで参加するぞ。

友人らは帰って行く。大法官は子供たちに家の中に入るよう促す。

ウェルテルが大法官の家を訪ねてくる。家の中をのぞき、家族の慈愛に満ちた様子に感動する。

ウェルテル

なんて素晴らしいんだ。ここにはすべてがある。

ウェルテルが、大法官の家に来たのは、舞踏会に行くシャルロットをエスコートするため。

大法官が家を覗いていたウェルテルに気がついて、声を掛ける。

大法官(父親)
シャルロットを迎えにきたのだね。私の娘は、妻が亡くなった後、子供たちの世話をしてくれている。

シャルロット

お待たせしてごめんなさい。私は子供たちの母のようなものなのです。「私の子供たち」だと思って愛しているのですよ。

大法官の家に、舞踏会に行く若いカップルも来た。ウェルテルが挨拶として、子供たちのひとりに頬にキスをすると、嫌がられる。

シャルロット

(嫌がった子供に向かって)このお兄さんは、あなたのいとこよ。

ウェルテル

いとこですって?私にその価値があるのですか?

シャルロット

ええ、いとこよ。たくさんいるものなのよ、いとこは。ソフィー、子供たちの面倒を頼むわね。

ウェルテル

(シャルロットは完璧だ。愛と真心の理想の姿だ。)

舞踏会に行く若者たちは出かけていく。シャルロットの婚約者、アルベールが大法官宅を訪ねてくる。

ソフィー(妹)
アルベール、戻ってきたのね。お姉さんも喜ぶわ。

アルベール(婚約者)
シャルロットはいるかい?

ソフィー(妹)
今晩はいないのよ。いつもは出かけないけれど。帰ってくるなら教えてくれればよかったのに。

アルベール(婚約者)
驚かせたかったんだ。彼女のことを聞かせて。私のことを覚えていてくれたかどうかを聞きたいよ。6か月も離れていたから。

ソフィー(妹)
みんないなくなった人を思っていたわ。あなたは姉の婚約者でしょう。それに、結婚式の準備をしていたわ。

アルベール(婚約者)
さあ、君は家に戻って。子供たちが君を探して、私が帰ってきたことがわかってしまう。夜明けに彼女に会いに来るよ。

ソフィーは部屋に戻る。アルベールはソフィーを見送って帰る。

アルベール(婚約者)
彼女は私を愛している。私のことを考えてくれている。感謝の祈りを込めて、愛は私の心から私の口へと昇っていく。

「彼女は私を愛している」Elle m’aime!

夜、月が出ている、家の庭

舞踏会から帰ってきたシャルロットとウェルテルが庭にいる。シャルロットは、別れの挨拶をして去ろうとする。

ウェルテル

あなたの瞳をずっと見ていたい。あなた以外に興味がないのです。

シャルロット

でも、あなたは私のことを知らないでしょう。

ウェルテル

私の魂は、あなたの魂を見分けました。最高の人だ!

シャルロット

違うわ。

ウェルテル

あなたが「私の子供たち」と呼ぶ存在を言わないとだめかな。

シャルロット

「私の子供たち」…私ではなく「母」の子供たち。家族にとって、母は大切な存在でした。今でも母に会いたい。

ウェルテル

生涯をかけて、あなたの瞳を守ろう。愛しています。

シャルロットは我に返り、家に帰ろうとする。

ウェルテル

あなたとまた、会えますか?

家の中から、大法官の声が聞こえてくる。

大法官の声
シャルロット、アルベールが帰ってきたぞ。

シャルロット

私には、アルベールという婚約者がいます。決めたのは亡くなった私の母です。

シャルロットは去り、一度振り返る。

ウェルテル

(あなたの母との誓いを守ってください。私は、そのために死ぬ。)

「ウェルテル」第2幕

前奏曲

教会の前の広場

牧師の金婚式のために、人々が教会に集まっている。大法官の友人らが、居酒屋前のテーブルで酒を飲んでいる。シャルロットとアルベールが、菩提樹の下のベンチに座り話す。

アルベール(夫)
結婚してから3カ月が経ったね。どれだけ大切に君を思っているか、知ってほしい。でも、私は君を幸せにできているだろうか。

シャルロット

女性の側に、まっすぐな心と誠実な魂を持つ人がいるのに、後悔することなんてあるでしょうか。

アルベール(夫)
なんて甘い言葉。それを聞くことができて、私はどれだけ幸せか。

ふたりは教会に入っていく。ウェルテルが、ふたりの仲むつまじい様子をみて、苦悩する。

ウェルテル

(別の男が、彼女の夫だ。彼女が愛したのは私だったかもしれないのに。)

悲しみのあまり、ベンチを動けずに座っている。アルベールが教会から出てきて、ウェルテルに声を掛ける。

アルベール(夫)
私の魂が満たされている幸せに、時には自責の念が混じることも…。

ウェルテル

自責の念ですって?

アルベール(夫)
結婚前にシャルロットと君の間に、感情が近づいたことを知っている。君の恋が叶わなかったことを気の毒に思うよ。妻との間にあったことは、すべて許そう。

ふたりに、妹のソフィーが花束をもち、駆け寄ってくる。

ソフィー(妹)
(アルベールに)義兄さん。牧師さんのために作った花束を見て。踊りましょうよ。

(ウェルテルには)あなたもあとで一緒に踊りましょう。なんてあなたは暗い顔をしているの。今日はみんな幸せになる日なのよ。

アルベール(夫)
ウェルテル、君は近くの幸福を見逃している。笑みを浮かべ、花束を持って、近くにいるのに。

アルベールとソフィーは、牧師の館に入っていく。

ウェルテル

(私は真実を言っただろうか。私のシャルロットへの愛は、神聖なもの…そうだろうか。罪深い欲求はなかったのか。私は嘘をついていた。恥ずかしい。立ち去りたい。)

ウェルテルが遠くにいるシャルロットを見かける。

ウェルテル

(立ち去る?それはできない。彼女に近づきたい。)

シャルロットに声をかける、ウェルテル。

ウェルテル

初めて出会ったときの親密さに満ちた日は、遠くなったね。

シャルロット

アルベールを愛しています。あなたは他の女性を愛するべきよ。

ウェルテル

愛しています。

シャルロット

遠くに去ってください。

ウェルテル

遠くに行こう。だが、永遠に会えないのは、つらすぎる。

シャルロット

私はそこまで厳しくないわ。またクリスマスに会いましょう。

二人が出会ったのが、7月。シャルロットの結婚から3ヶ月過ぎ、次に会うのは、クリスマス

シャルロットは去る。ウェルテルは彼女を追いかけるが、諦めて戻ってくる。

ウェルテル

(そうだ。彼女が命じるなら、遠くに行かなくては。彼女の心の平安のためだ。永遠に休息したい。父は子が予定より早く旅から帰ってきても、最初は怒っても、迎え入れるものだ。神もそうだろう。)

「そうだ。彼女が命じるなら」Oui! ce qu’elle m’ordonne

ウェルテルが去ろうとした所に、妹のソフィーが通りかかる。

ウェルテル

この町から去るんだ。私は永遠に戻らないだろう。

ウェルテルはソフィーに別れを言い、立ち去る。ソフィーは突然のことに驚き、泣く。妹の様子にシャルロットが気がつき、アルベールも声を掛ける。

シャルロット

どうしたの?

ソフィー(妹)
ウェルテルがここから永遠に去ると言って、どこかに行ったわ。

シャルロットとアルベールは驚く。

「ウェルテル」第3幕

前奏曲

アルベールの家の一室

クリスマスイブの夕方。シャルロットは、ひとり物思いにふける。

シャルロット

ウェルテル。私の心は、彼で占められている。彼から届いた手紙…捨てられない。破り捨てるべきなのに。

(ウェルテルからの手紙を読む)

「12月の暗い空、私はひとりです。あなたは「クリスマスに」と言い、私は「二度と」と言った。どちらが本当のことを言ったのか、わかるだろう。約束の日に私が現れなくても、私を責めずに、私のために泣いて欲しい。あなたは手紙を読み、涙を流し、身震いするだろう。」

身震いするだろう!身震いするだろう!!

「手紙の歌」Werther! Qui m’aurait dit…Ces lettres!

歌詞と対訳

「手紙の歌」Werther! Qui m’aurait dit…Ces lettres!|ウェルテル

ウェルテルからの手紙を読み、悩むシャルロット。「永遠に」会わないと言った割に、新婚家庭に手紙をたくさん送っていたウェルテルの怨念(愛)のこもった手紙・・・

妹のソフィーが家を訪ねてくる。ソフィーは、ふさぎ込む様子でいる姉のシャルロットを心配をする。

ソフィー(妹)
こんにちは。お姉さん。様子を見に来たわ。ウェルテルがいなくなってから、みんなが暗くなってしまったわ。

シャルロット

あなたまでウェルテルのことを言うなんて。(涙を流して、ソフィーが戸惑う)涙を流さないと魂の中にたまっていって、心がつらくなるのよ。

ソフィー(妹)
ここにいたらダメだわ。実家に帰って父や子供たちに顔を見せて。

シャルロット

ええ、たぶん。

ソフィーは帰って行く。シャルロットは神に祈る。

シャルロット

神よ、私の弱い心を支えてください。

ウェルテルがシャルロットの家に訪問。ウェルテルは顔面蒼白で、今にも気絶しそうな様子。

ウェルテル

私だ。あなたと離れている間、会わずに死んでしまおうとした。でも、私は来てしまった。ドアの前でも、逃げてしまいたかった。そのようなことはどうでもいい。ここに今、私はいる。

シャルロット

死ぬなんて、どうしてそのようなことを言うの。みんなあなたを待っていたのよ。

ウェルテル

では、あなたは?

シャルロットは答えない。ウェルテルは部屋にあった銃を見つける。

ウェルテル

この銃は以前触ったことがある。私の憧れる永遠の休息を待ちきれないよ。

シャルロットは聞かなかったふりをして、ウェルテルが翻訳していた「オシアンの詩集」を渡す。ウェルテルが詩を朗読する。

ウェルテル

オシアンの詩集。私の魂はこの中にある。春風よ、なぜ私を目覚めさせるのか。

「オシアンの歌・春風よ、なぜ私を目覚めさせるのか」Pourquoi me réveiller, ô souffle du printemps?

歌詞と対訳

「オシアンの歌」Pourquoi me réveiller|ウェルテル

原作「若きウェルテルの悩み」とオペラは少し違う。

「オシアン」は、スコットランドの伝説的な詩人。スコットランドの詩人、マクファーソンが発見して翻訳。18世紀ヨーロッパでブームになり、多くの作家に影響を与えた。

シャルロット

終わらせないで。この絶望、悲しみ。私にはそう見える。

ウェルテル

神よ、そうなのか。その震える声で、その涙に満ちた甘い瞳で言うのは告白ではないのか?

シャルロットは思わずウェルテルに抱きつく。ウェルテルは感動するが、シャルロットはすぐに我に返る。

ウェルテル

あなたは私を愛している!

シャルロット

違います。私たちを隔てているものを忘れられるでしょうか。

ウェルテル

後悔も苦しみもない。あなたは私を愛している!

シャルロット

違います。神よ、私をお守りください。

シャルロットは部屋から出て行く。

ウェルテル

シャルロットが私に裁きを下した。死を選ぶしかない。

ウェルテルは立ち去る。夫のアルベールが帰宅する。

アルベール(夫)
(ウェルテルが帰ってきた。彼が帰ってきたのを見た人がいる。)誰もいないのか?シャルロット。

シャルロットが部屋の奥から出てくる。

アルベール(夫)
ここに誰かいたのか?

シャルロット

…。

召使いがウェルテルから預かった手紙を持ってくる。アルベールがウェルテルからの手紙を読む。

アルベール(夫)
「遠い旅に出るので、拳銃を貸してください。」だと!ふざけるな!シャルロット。ウェルテルの希望通り、拳銃を渡すように

シャルロットは、拳銃の入った箱を召使いに渡す。召使いは箱を持って出ていく。アルベールはすべてを見届けてから、ウェルテルからの手紙を投げ捨て、出て行く。

シャルロットは家から出て、ウェルテルのもとへ向かう。

「ウェルテル」第4幕

間奏曲

ウェルテルの部屋

シャルロットが急いで入ってくる。

シャルロット

ウェルテル!神よ、血が!

ウェルテル

シャルロット。私を許してくれ。

シャルロット

助けを呼びに!

ウェルテル

誰も呼ばないでくれ。私に必要なのは、あなたの助けだけ。

シャルロット

あなたを愛しているわ。最初に出会ったときから。死が迫っているのなら、口づけをしましょう。

ウェルテル

墓地の外れに、二本の菩提樹がある。その間に葬ってくれ。もし無理なら、寂れた谷間に、葬ってほしい。牧師は見向きもしないだろう。でも、ある女性が来てくれる。優しい涙によって、男の魂は救われるだろう。

ウェルテルは死ぬ。外から、クリスマスを祝う子供の声。

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