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【ばらの騎士】簡単なあらすじと相関図

ばらの騎士, オペラ, リヒャルト・シュトラウス

「ばらの騎士」はリヒャルト・シュトラウスによる3幕のオペラです。劇中のオーストリアの貴族の慣習として出てくる「花婿の代理人が、花嫁に銀のバラを届ける」のは、台本を書いたホーフマンスタールのアイデアです。当初の仮題は「Ochs auf Lerchenau(オックス男爵の名前)」で、オックス男爵を主役として想定していました。オペラファンに人気の演目です。

目次

ばらの騎士、オペラ:人物相関図

ばらの騎士、オペラ:人物相関図
ばらの騎士、オペラ:人物相関図

ばらの騎士、オペラ:登場人物

元帥夫人(マルシャリン)陸軍元帥ヴェルデンベルク公爵夫人ソプラノ
オクタヴィアンロフラーノ伯爵・元帥夫人の愛人メゾソプラノ
オックス男爵貴族・元帥夫人のいとこバリトン
ゾフィーファーニナルの娘ソプラノ
ファーニナル金持ちの新興貴族バリトン
ヴァルツァッキ小悪党テノール
アンニーナ小悪党アルト
ばらの騎士、オペラ:登場人物
  • 原題:Der Rosenkavalier
  • 言語:ドイツ語
  • 作曲:リヒャルト・シュトラウス
  • 台本:フーゴ・フォン・ホーフマンスタール
  • 初演:1911年1月26日 ドレスデン宮廷歌劇場
  • 上演時間:3時間20分(第1幕75分 第2幕60分 第3幕65分)

ばらの騎士、オペラ:簡単なあらすじ

元帥夫人とオクタヴィアンは愛人関係。オックス男爵が訪ねてくる。二人の愛は秘密なので、オクタヴィアンは女装してメイドのマリアンデルになりすます。男爵は、花嫁に銀のばらを届けてくれる騎士を元帥夫人に紹介してほしいという。元帥夫人はオクタヴィアンを銀のばらの騎士に推薦する。

オクタヴィアンは男爵の花嫁であるソフィーに銀のばらを届ける。オクタヴィアンとソフィーは恋に落ちる。オクタヴィアンはオックス男爵を罠にかける。二人の関係を知った元帥夫人は、身を引く。

ばらの騎士、オペラ:第1幕のあらすじ

前奏曲

元帥夫人の寝室

朝、ベッドに元帥夫人とオクタヴィアンがいる。

元帥夫人

私の坊や。あなたは私の恋人。

オクタヴィアン

昼なんか嫌いだ。昼になると、君はみんなのものになる。

オクタヴィアンは窓に駆け寄って、カーテンを閉める。元帥夫人は笑う。呼び鈴が鳴る。

元帥夫人

あなたは隠れて。ベッドの後ろに剣を隠して。

黒人の小姓が朝食を持って部屋に入ってくる。すぐに出ていく。オクタヴィアンが屏風の裏から出てくる。

元帥夫人

なんて不注意なの?女性の寝室に剣を置いておくなんて。

オクタヴィアン

僕のふるまいを馬鹿にして、僕がこういったことに不慣れなのに腹を立てるのなら、あなたが僕に何を望んでいるのかわからないよ。

元帥夫人

哲学的なことを考えないで。朝食の時間よ。どんなものにも、その時がある。

彼らは朝食を食べ始める。

オクタヴィアン

元帥はクロアチアの森で熊や山猫を狩る。僕はここにいて、何を狩っている?

元帥夫人

(深刻そうに)彼の夢を見たの。

オクタヴィアン

(怒って)昨夜、彼の夢を見たの?

元帥夫人

夢は自分で作るものではないわ。彼が一旦家に戻ってきたのよ。中庭から馬や人の声が聞こえてきて、彼がいたわ。私は驚いて目覚めた。私って子供みたいね。今も中庭から音が聞こえる。耳から離れないのよ。あなたは何か聞こえる?

オクタヴィアン

何か音は聞こえるよ。でも、あなたの夫ではないよ。彼は遠くにいる。なんでそんなに怖がっているの?

元帥夫人

遠くにいても、元帥は素早いのよ。一度は…

オクタヴィアン

昔に何があったの?ねえ、何があったの?

元帥夫人

元帥だわ。衣裳部屋から入って、召使と言い争いをしている。

オクタヴィアンは剣を持って、右へ走る。

元帥夫人

そっちはダメよ。その部屋は、御用聞きと召使が控えている。間に合わない。ベッドの後ろに隠れて。

オクタヴィアン

僕が捕まったら、あなたはどうなる?

元帥夫人

隠れて!声が聞こえる!…元帥ではないわ。召使は男爵と呼んでいる。(笑って)お客だわ。あなたは服を着替えなさい。あの大声は聞き覚えがある。私のいとこのオックスだわ。

隠れていたオクタヴィアンが女装して出てきて、お辞儀する。

オクタヴィアン(マリアンデル)

ご主人様、私はあなたに仕えてまだ日が浅いです。

元帥夫人

まあ、可愛い。キスぐらいしかできないわ。

大きな音がする。

元帥夫人

彼は扉を壊すつもりかしら。あなたは帰りなさい。また来てね。

オクタヴィアンが出て行こうとすると、同時にオックス男爵が勢いよく入ってくる。ふたりはぶつかりそうになる。オックス男爵を引き留めようと、召使たちもやってくる。

オックス男爵

失礼。お嬢さん。けがはないですか?

オクタヴィアンは困って、答えない。

元帥夫人

お元気そうですね。

オックス男爵

(召使に)奥様は私に会えて、喜んでいるぞ。身分の高い人の間では、早い時間でも問題ないのだ。

オクタヴィアンは目立たないように、ベッドの方へ向かう。

元帥夫人

お許し下さい。召使は言われた通りにしたのです。

元帥夫人の合図で、召使がソファと肘掛椅子を前に動かして、去る。彼女はソファに座り、男爵に肘掛椅子を勧める。男爵は椅子に座ろうとするが、オクタヴィアンをじっと見る。

オックス男爵

なんて可愛い娘だ。

元帥夫人

私の女中で、田舎から来た若い娘です。ご迷惑をおかけするかもしれません。

オックス男爵

迷惑だなんて。奥様は驚かれたでしょう。私が花婿になるとは。

元帥夫人

花嫁はどなた?

オックス男爵

陛下の恩寵によって、貴族になった者です。

元帥夫人はオクタヴィアンに出ていくように合図する。オックス男爵はその表情を誤解する。

オックス男爵

確かに眉をひそめるようなものでしょう。ですが、彼女は天使のように可愛いのです。父親は金持ちで、健康状態もよくありません。

元帥夫人

私はそれがどれほどの価値を持つものかわかりました。

彼女はオクタヴィアンに合図を送る。オクタヴィアンは盆を持って、出て行こうとする。

オックス男爵

なぜココアを下げようとする?実は朝から何も食べていない。

元帥夫人

(諦めて)マリアンデル。給仕をしなさい。

オックス男爵は食事を始める。

オックス男爵

(オクタヴィアンに)ここにいるんだよ。君と話したい。
(伯爵夫人に)宿に泊まってから、花嫁の家に向かいます。貴族の慣習に従って、花婿の代理人を選び、銀のバラを花嫁に届けてもらいます。

元帥夫人

名誉ある役目に誰を選んだのですか?

オックス男爵

助言をもらうために、こちらに来ました。あと、結婚契約書の件で、あなたの公証人を紹介して下さい。

元帥夫人

私の公証人は午前中によく来ます。マリアンデル。控えの間を見てきなさい。

オックス男爵

彼女が行かなくていいだろう。私やあなたの世話をする者がいなくなる。そのうち誰か来るさ。

執事が入ってくる。

元帥夫人

公証人は来ているかしら?

執事
公証人、管理人、料理人、歌手とフルート奏者が来ています。

オックス男爵がオクタヴィアンに言い寄る。オクタヴィアンは軽くあしらう。元帥夫人は、二人の様子を見て笑いをこらえる。

元帥夫人

(笑いながら)あなたは花婿になるのでしょ?

オックス男爵

活気のないロバになれとでも?私は猟犬のように、獲物を求めて右へ左へ行くよ。若くても不愛想でもいい。身分も気にしない。どんな女も手に入れたい。

オクタヴィアン(マリアンデル)

(芝居がかって)恐ろしいわ。奥様、私を守って下さい。

元帥夫人

(少し大げさに)この子には手を出さないで。

オックス男爵

この娘を私の妻の召使にしたい。血筋が良さそうだ。私は貴族の隠し子を従者にしていてね。そうだ。彼に銀のバラを届けさせよう。

元帥夫人

ちょっと待って。マリアンデル。あのメダルを持って来て。

オクタヴィアン(マリアンデル)

(小声で)本気なの?

オクタヴィアンがメダルを持ってくる。元帥夫人はオックス男爵にメダルを見せる。

元帥夫人

この若者を花婿の代理人したらいかが?オクタヴィアン伯爵です。

オックス男爵

素晴らしい。(メダルとオクタヴィアンを見比べて)二人は似ている。

元帥夫人

私もそのような気がするわ。

オックス男爵

彼女は貴族の隠し子なのか。

元帥夫人

(オクタヴィアンに)さあ、もう行きなさい。控室の人たちをこちらに入れて。

オクタヴィアンは部屋を出ていく。隣の控室から、公証人や料理長、御用聞きの人が入ってくる。続いて美容師が入ってきて、元帥夫人の髪を整える。テノール歌手が歌い始める。

イタリアのテノール歌手
固く武装する心を持っていても、美しい瞳の前では負けてしまう。

「固く武装する心もて」Di rigori armato il seno

この場面は、有名なオペラ歌手がサプライズで出演することがあります。

元帥夫人はオックス男爵に公証人を紹介する。男爵は、小悪党のヴァルツァッキ、アンニーナと出会う。

オックス男爵

(元帥夫人に)これに銀のバラが入っています。

元帥夫人

オクタヴィアン伯爵に私から渡します。

男爵は元帥夫人にバラを預けて、やっと帰っていく。

元帥夫人

なんて図々しい人。若い花嫁とお金をせしめようとしている。それらをもらって当たり前だと彼は思っている。でもこういうことはよくあること。私もまた娘だった頃を思い出す。修道院を出て、すぐに結婚した。あの娘はどこへ行ったの?

オクタヴィアンが戻ってくる。

オクタヴィアン

悲しそうだね。きっと僕のことを心配しすぎたんだ。

元帥夫人

時というものは、結局のところ、逆らうことはできない。

オクタヴィアン

そんなことを言うなんて、僕を好きじゃないんだ。

オクタヴィアンは泣き始める。

元帥夫人

近いうちにあなたは私を捨てるのに、私があなたを慰めるなんて。

オクタヴィアン

そんなことあるものか!

元帥夫人

ひとりになりたい。午後に会う気になったら連絡するわ。

オクタヴィアン

君の言う通りにするよ。

オクタヴィアンは去る。

元帥夫人

キスもせずに彼を帰してしまった。

召使が探しに行くが、オクタヴィアンは去った後だった。

ばらの騎士、オペラ:第2幕のあらすじ

フォン・ファーニナル家の大広間

父のファーニナル、ゾフィー、執事、召使たちが集まっている。

ファーニナル
厳かな日、大いなる日だ。

執事
貴族の慣習では、花嫁の父はバラの騎士が来る前に、この場を離れていないといけません。

ファーニナルは広間を出ていく。

ゾフィー

神様が結婚へと導いて下さる。神に祈りを捧げます。

男たちの声
(窓の外から)ロフラーノ、ロフラーノ。

女中
バラの騎士の名前、それとあなたの親戚になる人の名前を呼んでいるわ。馬車の扉が開いたわ。彼は銀色の服を着ている。

召使が扉を開ける。オクタヴィアンが入ってくる。白と銀色の服に、銀のバラを持っている。

オクタヴィアン

名誉ある役を受けました。清らかな花嫁にバラを贈ります。

「二重唱」Mir ist die Ehre widerfahren

ゾフィー

地上のものとは思えません。天上のバラのよう。

オクタヴィアン

これほど幸せだったことがあるか?僕は子供だった。この人を知らずにいた。僕は一体誰だ?

女中や召使は去る。オクタヴィアンとゾフィーが会話をする。

ゾフィー

私はあなたを知っているわ。貴族の本で読んだのよ。私は毎晩自分の親戚になる人を調べているの。名前も、年齢も。洗礼名も。オクタヴィアン、マリア、エーレンライヒ、ヴォナベトゥーラ、フェルナンド、ヤキント。

オクタヴィアン

僕でもあまり覚えていないのに。

ファーニナルとオックス男爵が入ってくる。

ファーニナル
こちらがあなたの花嫁です。

オックス男爵

素敵なお嬢さんですね。(値踏みをするように見て)平民の娘にしては綺麗な手だ。

ゾフィー

馬を買うように私を見るなんて。

オックス男爵

(オクタヴィアンを見て)そっくりだ。彼には妹がいるんですよ。隠し子のようですが。君の父親が遊び人だからって、恥ずかしがることはない。

ゾフィー

これが私の花婿?

オックス男爵

さあ、こっちにおいで。私といとこ(オクタヴィアン)で話を聞こう。お前が結婚に望むことを言ってごらん。

オックス男爵は、ゾフィーを膝に乗せようとする。セクハラまがいでゾフィーを口説き始める。

ファーニナル
我が家の壁がガラスだったら、みんなが私を羨むだろう。

オクタヴィアン

こんなところにいたくない。

公証人が部屋に入る。公証人とオックス男爵、ファーニナルは別室に移動する。

オクタヴィアン

君はあんな男と結婚するの?

ゾフィー

絶対に嫌よ。でも、あなたはあの人のいとこなのよね?

オクタヴィアン

昨日まで会ったことのない奴だ。まず、君は自分を助ける。それから僕が君を助ける。君は二人のためにやらなくてはいけない。

ゾフィー

二人のために?なんて嬉しい言葉なの。

小悪党のヴァルツァッキ、アンニーナが現れて、二人を捕まえる。男爵が隣の部屋から来る。

オックス男爵

お嬢さん。何か言うことは?

オクタヴィアン

このお嬢さんはあなたが好きではない。

オックス男爵

それがどうした?いつか好きになるさ。さあ、行くぞ。公証人が待っている。

オクタヴィアン

行かせない。剣を抜け。

オクタヴィアンが剣を抜き、オックス男爵に飛びかかる。オックス男爵が少しけがをする。

オックス男爵

(大げさに)やられてしまった。

大騒ぎになって、屋敷中の人が出てくる。

ファーニナル
何があったんだ?私の婿が大変だ。

ゾフィー

彼を私の花婿だとは思えません。

ファーニナル
原因はお前の横に立っている若者か?せっかくの結婚が台無しだ。お前はあの人と結婚するのだ。(オクタヴィアンに)どうかお引き取り下さい。

オクタヴィアンは留まろうとするが、ファーニナルに丁寧に追い出される。

ファーニナル
うちの屋敷でこんなことが。

オックス男爵

もうよい。酒を出せ。

ファーニナル
私も男だ。必ず償いをします。

ファーニナルが出ていく。召使がワインを持ってくる。アンニーナが思わせぶりに手紙を持ってくる。

小悪党のアンニーナ
あの娘から手紙です。

オックス男爵

お前は字が読めるか?

小悪党のアンニーナ
「騎士様。私は明日暇です。あの時は奥様がいたので言えませんでした。あなたが好きです。マリアンデル。」

アンニーナは小金がもらえずに、オックス男爵を威嚇する。酔っぱらった男爵が部屋を出ていく。

ばらの騎士、オペラ:第3幕のあらすじ

宿屋の一室

パントマイム

小悪党のヴァルツァッキ、アンニーナが、オックス男爵を罠にはめる準備をしている。アンニーナは喪服を着て、顔が隠れるように黒いヴェールをしている。女装したオクタヴィアンがやってくる。二人に財布を渡して、去る。

オックス男爵と女装したオクタヴィアンがやってくる。テーブルには食事やワインが用意してある。

オクタヴィアン(マリアンデル)

ダメダメ。お酒は嫌いなの。もう私、帰ります。

オックス男爵

どうして?いいじゃないか。

オクタヴィアンは奥に移動して、ベッドを見つける。

オクタヴィアン(マリアンデル)

ベッドがある!誰があそこで寝るの?あなたは花婿なんでしょ?

オックス男爵

ここでは花婿も、女中も関係ないんだ。

オックス男爵はオクタヴィアンを抱き寄せて、キスしようとする。

オックス男爵

あの若者にそっくりだ。忌々しい奴だ。

オックス男爵はキスをやめる。従者がやってきて、給仕をする。音楽が聞こえてくる。

オクタヴィアン(マリアンデル)

涙が出てくるわ。綺麗な音楽ね。時が過ぎれば、風が吹くように私たちは死んでいく。私が死んでも悲しむ人はいないわ。

オックス男爵

彼女は酔っぱらうとこうなるのか?体を楽にしてあげよう。

オクタヴィアンがわざと無防備になり、オックス男爵が服を脱がせ始める。男爵は自分のかつらも脱ぐ。顔に黒いヴェールを被り喪服を着た小悪党のアンニーナが現れる。

オクタヴィアン(マリアンデル)

(小悪党のヴァルツァッキに)ファーニナルを呼びに行くように。

小悪党のアンニーナ
私の夫だわ。神様が証人なのよ。

4人の子供たち
パパ、パパ!

オックス男爵

この女は何者だ?見たこともない。警察を呼べ!

騒ぎを聞きつけて、警部が来る。

警部
何事だ?

オックス男爵

(横柄な態度で)よく来た。私は静かに食事がしたい。

宿屋の主人
こちらは、男爵で…

警部
かつらはどこにやった?身元を証明できるのか?若い娘とこんな時間に何をしている?

オックス男爵

この娘は私の婚約者だ。何も問題ない。娘の名前は、ゾフィー・ファーニナルだ。

ファーニナルが宿屋に到着する。

ファーニナル
あなたが大変だと聞いてやってきました。大丈夫ですか?

オックス男爵

誰が彼を呼んだんだ?

警部
この男は何者だ?

ファーニナル
フォン・ファーニナルですが?

警部
あの娘の父親か。

オックス男爵

いや、彼は父ではない。兄、いや、甥だ。

ファーニナル
(怒って)あなたの義理の父ですよ。この女は私の娘ではない。下にいる娘を呼ぶぞ!

ゾフィーが部屋に入る。

ファーニナル
ごらん。あの男には、妻も子もいる。しかも怪しい女までいる。

ゾフィー

彼を私の花婿だと思ったことはありません。

ファーニナル
ああ、私はウィーン中の笑いものになってしまう。

ファーニナルは倒れて、別室に運ばれる。オックス男爵は、かつらを見つけて身に着ける。

オックス男爵

私は帰る。(オクタヴィアンに)さあ、家まで送ろう。

オクタヴィアン(マリアンデル)

私は警部に話したいことがあります。

オクタヴィアンは警部と話した後に、部屋の奥に行く。元帥夫人が、召使や黒人の小姓を引き連れて現れる。

オクタヴィアン

(着替えている途中で)マリー・テレーズ、どうしてここに?

オックス男爵

あなたが来てくれてありがたい。

元帥夫人

(警部に)私をご存じ?あなたは以前、元帥の有能な部下だったわね。

オクタヴィアンが男の格好で出てくる。

オクタヴィアン

筋書きが違う。

元帥夫人

(低い声で)ロフラーノ。彼女は可愛い人ね。(オックス男爵に)あなたはもう帰りなさい。警部さん。すべては茶番劇だったのよ。

警部が去る。オックス男爵は、オクタヴィアンの顔をじろじろ見る。

オックス男爵

ああ、そういうことか。元帥夫人、オクタヴィアン、マリアンデル。

オックス男爵は4人の子供たちに付きまとわれながら、去る。

ゾフィー

ふたりは親密だったのね。私は彼にとって何でもない。

オクタヴィアン

(元帥夫人に)こんなはずじゃなかったんだ。

元帥夫人

彼女のもとに行きなさい。

オクタヴィアンはゾフィーのもとに行く。

元帥夫人

彼を正しいやり方で愛そうと誓った。こんなにも早くその時がやってくるなんて。

「三重唱」Hab’ mir’s gelobt

オクタヴィアン

何が起きたんだろう?でも、彼女に聞くことは許されない。

ゾフィー

教会にいるみたいに、清らかだわ。彼女は私に彼を譲りながら、それと同時に、彼から何かを奪っている。

元帥夫人

ご自由にどうぞ。

オクタヴィアンとゾフィーが見つめあう。元帥夫人が去る。

ゾフィー

夢なのかしら。

「二重唱」Ist ein Traum

オクタヴィアン

永遠に離れない。

オクタヴィアンとゾフィーが抱き合う。その時にゾフィーがハンカチを落とす。二人は出ていく。黒人の小姓がゾフィーのハンカチを探して、見つけると出ていく。

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