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【さまよえるオランダ人】簡単なあらすじと相関図

さまよえるオランダ人, オペラ, ワーグナー

ワーグナーの初期の名作オペラが「さまよえるオランダ人」です。作品のテーマは「女性の犠牲(純愛)によって、男性が救済される」です。さまよえるオランダ人は、ワーグナーが借金取りから逃れるため、ロシア帝国(ラトビア)のリガからパリへ航海中に嵐に遭遇した体験に影響を受けています。

目次

さまよえるオランダ人、オペラ:人物相関図

さまよえるオランダ人、オペラ:人物相関図
さまよえるオランダ人、オペラ:人物相関図

さまよえるオランダ人、オペラ:登場人物

オランダ人幽霊船の船長バリトン
ゼンタダーラントの娘ソプラノ
ダーラントノルウェー船の船長・ゼンタの父バス
エリック若い猟師テノール
舵取りダーラントの船員テノール
マリーゼンタの乳母メゾソプラノ
さまよえるオランダ人、オペラ:登場人物
  • 原題:Der fliegende Holländer
  • 言語:ドイツ語
  • 作曲:リヒャルト・ワーグナー
  • 台本:リヒャルト・ワーグナー
  • 原作:ハインリヒ・ハイネの小説「フォン・シュナーベレヴォプスキー氏の回想記」
  • 初演:1843年1月2日 ドレスデン ザクセン王立宮廷劇場
  • 上演時間:2時間20分(第1幕60分 第2幕45分 第3幕35分)

さまよえるオランダ人、オペラ:簡単なあらすじ

かつて口にした恐ろしい言葉のせいで、不老不死の呪いをかけられたオランダ人船長が海にいる。彼は不死の呪いを解くために、女性から永遠の貞節をもらう必要がある。彼は貞節な女性を探しに陸に上がるが、そんな女性はいない。

嵐で入り江に逃げ込んだノルウェー船の船長ダーラントはオランダ人と出会う。彼は財宝と引き換えにダーラントの娘に会わせてくれと頼む。

その頃、ダーラントの娘ゼンタは、船乗りの伝説であるオランダ人の肖像画に恋をしていた。だが、ゼンタには恋人のエリックがいる。ダーラントはオランダ人を家に連れ帰る。ゼンタは肖像画にそっくりなオランダ人と結婚することを誓う。

エリックはゼンタの不誠実さに怒る。二人の会話を聞いていたオランダ人は、ゼンタに別れを告げる。ゼンタは、永遠の貞節のために命を捧げると言い、海に身を投げる。幽霊船は沈没し、船長とゼンタは神々しい姿で海から現れ、天国へ行く。

さまよえるオランダ人、オペラ:解説

オペラ「さまよえるオランダ人」の地図
オペラ「さまよえるオランダ人」の地図

ワーグナーは、リガからパリへ。途中嵐でノルウェーに避難

ワーグナーは、リガから航路でロンドンへ。一週間ほど滞在、その後パリに向かいました。リガからロンドンの間に嵐に遭遇し、ノルウェーに避難します。その体験が「さまよえるオランダ人」に生かされています。

オペラの舞台は、ノルウェーのフィヨルド

切り立った崖に囲まれた入り江、フィヨルドが「さまよえるオランダ人」の舞台になります。

喜望峰・オランダ人が悪魔に呪いを掛けられた岬

南アフリカ共和国、ケープタウン近くの岬、喜望峰は、別名「嵐の岬」と呼ばれたほど船の難破が多い、危険な海域でした。

オランダ人は、嵐の中岬を船で通り抜けるときに「これくらい通り抜けてやる、永遠に」と言ったばかりに、悪魔に呪いを掛けられ「永遠に、海をさまよう」ことになってしまいました。

「さまよえるオランダ人」とフライング・ダッチマンの伝説

「さまよえるオランダ人」は、フライング・ダッチマンの伝説と、ハインリヒ・ハイネ「フォン・シュナーベレヴォプスキー氏の回想記」を元に考えられた、オペラです。

フライング・ダッチマンとは、幽霊船の船の名前。伝説の内容は、オペラと同様に、オランダ船の船長が暴言をはいたことで、幽霊船になってしまったというもの。

映画やマンガでも「フライング・ダッチマン」は度々登場します。映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」のデイヴィ・ジョーンズ(タコ足のひげがある船長)が乗っていた幽霊船が「フライング・ダッチマン」号です。

さまよえるオランダ人、オペラ:第1幕のあらすじ

序曲

ノルウェーの海岸

切り立った崖に囲まれた、入り江。遠くの海では荒波が起こっているが、入り江は静か。ダーラント船長の船が錨を下ろして、嵐をやり過ごしている。

船員たち
ホヨヘ、ハロヨ!

ダーラント

忌々しい。もうすぐ娘のゼンタに会えるはずだったのに、嵐で足止めとは。おい、お前、危険は過ぎたから、しばらく見張りを頼むぞ。

ダーラントは船室に入っていく。残った船員は海を見ている。

船員
船長!わかりました!休んで下さい。

遠い海から嵐と共に帰ってきたぞ、可愛い娘よ。南風が吹かなければ帰ってこれなかった。南風よ、もっと吹け。ハロホー、ヨロホホホ!

「遠い海から嵐と共に」Mit Gewitter und Sturm aus fernem Meer

ダーラントの船の反対側に、黒のマストに赤い帆を張った、オランダ人の船が錨を下ろす。

オランダ人

期限が切れた。7年経ったのか。やっと陸に上がれるぞ。だが、海よ。また俺を迎えることになるだろう。

「期限は切れた」Die Frist ist um

幾度、海に身を投げたことか。俺の悩みは永遠に続く。死が来ないのだから。俺が救われる条件は、女性からの「永遠の貞節」それを得られれば、安らかに死ぬことが出来るのに。

「幾度、海に身を投げたことか」Wie oft in Meeres tiefsten Schlund

ダーラントが船室から出てくると、見慣れない船が近くにある。

ダーラント

おい、舵取り。たいした見張りだな。寝ていただろう。

船員
すみません。船長!おーい、隣の船よ。名前は何だ?…おかしいな返事がないぞ。

ダーラント

あそこにいるのが、船長らしい。

ダーラントが船から下りて、陸にいるオランダ人に話しかける。

ダーラント

お名前は?どちらの国から?

オランダ人

遠い国から来ました。

ダーラント

それで、あなたは誰ですか?

オランダ人

オランダ人ですよ。嵐や悪い風に流されあちこちさまよっているのです。そうだ。お宅にしばらく泊めてもらえませんか。お礼はしますよ。船にはあらゆる国の財宝があります。一夜分のお礼を今見せましょう。真珠や宝石です。

オランダ人の船から、船員が箱を持ってくる。

ダーラント

宿を貸すだけなのに、こんな財宝をいただけるなんて。

オランダ人

いえいえ、こんなものは船にたくさんあります。私には妻も子もなく、故郷もどこか分からない身の上なのですよ。

あなたに娘さんはいますか?妻になってくれるのなら、船の財宝をすべてあげます。

ダーラント

これほど素晴らしい花婿がいるだろうか。もちろん承知しますよ。娘は美人で、親孝行な娘です。

オランダ人

親孝行なら、夫にも誠実でしょうね。

ダーラント

財宝をいただけるのですから、誠実な娘をあげましょう。

オランダ人

(俺を救う天使になってくれるだろうか。)

ダーラント

(なんてうまい話なんだ。大金持ちが婿になるぞ。)

薄暗かった空が晴れて、青空が広がる。ダーラントの船に乗っている船員たちが喜びの声を上げる。

船員
南風だ。帰れるぞ。

ダーラント

さあ、行こう。我が家に。

オランダ人

お先に行って下さい。うちの乗組員は疲れていますから、しばらくして追いかけます。すぐに追いつくでしょう。

船員たち
遠い海から嵐と共に帰ってきたぞ、可愛い娘よ。南風が吹かなければ帰ってこれなかった。南風よ、もっと吹け。ハロホー、ヨロホホホ!

「合唱」Mit Gewitter und Sturm aus fernem Meer

ダーラントの船が沖合に出て行く。自分の船に乗り込む、オランダ人。

さまよえるオランダ人、オペラ:第2幕のあらすじ

ダーラントの家・居間

壁には海図や海にまつわるものが飾ってある。一番奥の壁には、黒いひげの男の肖像画。近所の娘たちが糸を紡いでいるそばで、ゼンタは黒ひげの男の肖像画をうっとりと見ている。

近所の娘たち
ぐるぐる回れ、かわいい糸車。元気に回れ、糸を紡ぐのよ。愛しい人は海の上。風が吹けば帰ってくるでしょう。お土産を持って帰ってきて。

「糸紡ぎの合唱」Summ und brumm, du gutes Rädchen

乳母
ゼンタお嬢さん。糸を紡がなくていいのですか?

近所の娘たち
ゼンタの思い人は、海でなくて陸にいるのですもの。お土産は財宝ではなくて、獣よ。相手は猟師なんだから。

ゼンタは肖像画をじっと見ている。

ゼンタ

乳母のあなたが、このかわいそうな人のことを話してくれたわね。悲しいお話だったわ。

乳母
相変わらず肖像画に夢中なのだから、困ったわね。

近所の娘たち
ゼンタには、聞こえていないわよ。絵に夢中なのだから。ゼンタを好きな猟師が知ったら、絵を撃ち落としてしまうかもね。

ゼンタ

ふざけたことは言わないで。怒るわよ!糸紡ぎの歌なんて歌わないで。私が歌いましょう。さまよえるオランダ人の歌を。

ヨホホエ、海であの船に出会ったことはあるか。血の色の帆に、黒いマストの船に乗るのは、青白い顔の船長。海をさまよう運命だ。命を捧げる乙女が現れれば、男は救われる。

昔、男がある岬を通るとき「乗り越えられるさ、永遠に」と暴言。聞き逃さなかった悪魔が男に「永遠の命で、海をさまよう」という呪いを掛けた。

それ以来、7年ごとに陸に上がるが誠実な乙女に出会えない。

「ゼンタのバラード」Johohoe! Traft ihr das Schiff im Meere an

歌い終わったゼンタは、椅子に倒れ込む。しばらくした後、突然立ち上がって叫ぶ。

ゼンタ

天使よ、導いて下さい。私こそ、彼を救う乙女です。

その場が凍り付いた所に、ゼンタに恋をしている猟師が部屋に入ってくる。

乳母
ゼンタお嬢さんは少しおかしいのです。旦那様が帰ってきたら、この肖像画を捨ててしまわないといけないわ。

猟師(エリック)
ゼンタ。僕を苦しめるのはやめてくれ。これを伝えに来たんだ。船が帰ってきたぞ!

乳母や近所の娘たちは喜び、海の男たちを迎えるために食事の準備をしに部屋を出て行く。ゼンタも行こうとするが、猟師に止められる。

猟師(エリック)
待ってくれゼンタ。行かないでくれ。話があるんだ。僕を苦しみから解放してくれ。

ゼンタ

何を言っているの?

猟師(エリック)
君のお父さんは君の結婚を考えている。僕には死ぬまで誠実な真心、なけなしの財産、猟師の運だけだ。君のお父さんに断られたら、僕の心は悲しみに暮れるだろう。教えてくれ、君は僕の手助けをしてくれるのか。

ゼンタ

父を迎えに行くわ。

猟師(エリック)
君が僕に与えた狂おしいほどの愛の傷から、逃げるというのか?僕の最後の質問を聞いてくれ。君は僕の味方になってくれるの?

ゼンタ

私の心を疑わないで。あなたに親切にしているわ。何があなたの心を疑惑で曇らせるというの?

猟師(エリック)
君のお父さんは財産を欲しがる人だから。それに、君をどうして頼ることができようか。僕の願いを叶えてくれたかい?肖像画に夢中になるのをやめて欲しいし、あの不気味な歌を歌わないでくれ。

ゼンタ

私は子供であなたのいうことがよくわからないわ。絵や歌を怖がるなんて変よ。可哀相な人の運命を思って何が悪いの?

猟師(エリック)
いいや。僕は怖い。君は悪魔に取り憑かれている。

高い岩の上で夢で見たんだ。船から降りてきた君のお父さん。後に続く、あの肖像画の男。君は家から出てきて、その男とキスをした。男と君は海に逃げていった。

「高い岩の上で夢を見た」Auf hohem Felsen lag’ ich träumend

ゼンタ

あの人は私を探しているのね。一緒に海に沈んでいく運命なのよ。

猟師は絶望して部屋を出て行く。肖像画を見つめるゼンタ。父のダーラントとオランダ人が部屋に入る。ゼンタは肖像画から目を離し、絵とそっくりなオランダ人を見て、驚きのあまり叫び声を上げて、金縛りに遭ったように動けない。

ダーラント

娘よ。私が帰ってきたのに抱擁はなしか。

ゼンタ

お帰りなさい。お父さん。あの方は誰?

ダーラント

娘よ、見知らぬ男を歓迎してくれ。同じ船乗りのお客さんだ。今夜うちに泊まってもらう。もしお前がよければ、花婿になってもらってもいいぞ。この方と結婚すれば、財宝が手に入るんだ。

ゼンタとオランダ人は、互いに無言で見つめ合う。

ダーラント

どうやら、私は邪魔なようだな。

ダーラントはふたりを部屋に残して出て行く。見つめ合うふたり。

オランダ人

(遠く過ぎ去った過去の中から娘が語りかける、呪いの日から望み続けていた娘が目の前にいる。天使のような娘に救われることが出来たら。)

悩みに満ちた暮らしをしてきました。あなたの貞節によって、心を安らげることが出来るでしょうか。

ゼンタ

(彼の深い悲しみが語りかけてくる。気の毒な方。)

あなたの運命がどんなにむごいものでも、私の身に恐ろしい運命が襲いかかろうとも、受け入れます。永遠の貞節を捧げましょう。

ダーラントが部屋に戻る。

ダーラント

失礼しますよ。海から戻ったら宴をするんだが、婚約の祝いも一緒にしていいかな。

ゼンタ

彼に永遠の貞節を誓いましょう。

オランダ人

私を呪った地獄よ。乙女の貞節を嘆くがいい。

ふたりは結婚を誓い、ダーラントは喜ぶ。

さまよえるオランダ人、オペラ:第3幕のあらすじ

ダーラントの家近く、入り江

ダーラントの船と、オランダ人の船が入り江に並ぶ。ダーラントの船では船員たちがお祭り騒ぎ。オランダ人の船は静まりかえっている。

船員たち
今日は愉快に騒ごう。陸には可愛い娘がいるし、煙草に酒がある。

「水夫の合唱」Steuermann! Laß die Wacht!

船員たちは酔っ払い、甲板で踊る。糸を紡いでいた娘たちが、家から食べ物や酒を持ってきて、船を見上げる。

娘たち
大盛り上がりね。私たちに用はないのかしら。それなら、オランダ人の船の方に行こうかしら。お隣さんにもお裾分けしないと。

船員たち
明かりはつけないし、静かなんだ。酒がないのかねえ。

娘たち
(オランダ船に向かって)お祝いしなくていいの?返事をしなさいよ。ねえ、ちょっと不気味じゃない?

船員たち
まるで「さまよえるオランダ人」の船みたいだ。歌とそっくりじゃないか。まあ、いいさ。娘さんたちよ。甲板に上がってこいよ。

娘たち
まだ早いわ。

娘たちは食べ物や酒を渡して帰って行く。

船員たち
さあ、みんなで酒を飲むぞ。お隣さんが酒をいらないっていってくれたからな。

オランダ船の周りだけ、波が立ち始めて、船が青白い炎に包まれる。鋭い風が吹き、それまでいなかったオランダ人の船に、船員たちが出てきた。

幽霊船の船乗り
ヨホホエ!船長。7年が過ぎましたよ。さあ陸へどうぞ。乙女の貞節を求めて結婚へ。おやまあ、船長、もう出発ですか。恋につきのない男だ。

オランダ人の船乗りが歌い始めると、大波と暴風が起こる。幽霊船の周りだけ荒れていて、離れた場所は静かなもの。ノルウェーの船員たちは、その様子に驚き怯えている。

船員たち
本当に幽霊なのか?みんなで歌おう。

幽霊船の船乗り
嵐よ、もっと激しくなれ。この船は悪魔に守られている。

船員たちは対抗しようとするが、幽霊船の歌声はさらに強くなり、船員たちは甲板から逃げ出す。それを見た、オランダ船の船乗りから高笑いが響く。しばらくすると、また静かな海に戻る。


ダーラントの家から出てきたゼンタを追いかける猟師。

猟師(エリック)
何を聞いたのか。神よ、僕は何を目にしたのか。だましているのか、真実か。

ゼンタ

聞かないで。

猟師(エリック)
ゼンタ。待ってくれ。君は不吉な力に捕らわれている。かつて僕に貞節を誓うと言ってくれたのに、あれはどうなるんだ。

ゼンタ

覚えていないわ。私はもうあなたに会ってはいけないの。

猟師(エリック)
君はあの日の出来事を忘れたというのか。君が僕を高台に呼び出して、ふたりで君の父の船を見送っただろう。

君のお父さんは僕に「娘を守ってくれ」と言い、君は僕に抱きついて、愛をささやいてくれた。僕の心には、君の心が届いたというのに。

ふたりの話を立ち聞きしていたオランダ人が現れる。

オランダ人

もはや終わりだ。残念ながら失われた。救済は永遠に失われた。

猟師(エリック)
誰だ!

ゼンタ

お待ち下さい。

オランダ人

ゼンタ。あなたの貞節はダメでしたね。わたしはあなたまで滅ぼすつもりはありませんから。

帆を高く、錨を上げろ。またも海に行かなければならない。

立ち去ろうとするオランダ人を引き止める、ゼンタ。オランダ人は、船員に向かって出発の合図をする。

ゼンタ

お待ち下さい。私を疑うのですか。誓ったことは必ず守ります。

オランダ人

あなたは負うべき運命を私のおかげで逃れることが出来たのですよ。私は呪いを受けている身です。呪いから救うのは、命をかけて貞節を守る者だけ。

これまで多くの女性が私に貞節を誓いながらも裏切り、呪いにより命を落としてきました。ですが、あなたは助けましょう。

ゼンタ

あなたのことは存じています。あなたを救うのは、私です。

猟師(エリック)
(船と家にむかって)ゼンタが大変だ。誰か!誰か助けてくれ。

猟師の声を聞いて、ダーラントや人々が集まり出す。

ダーラント

おお、神よ!!

オランダ人の船は赤い帆が張られ、船員たちが出航の準備をしている。

オランダ人

いいえ、あなたは私を知らない。世界中の船乗りが恐れる「さまよえるオランダ人」それが、私の名前だ。

オランダ人が船に乗り込むと、瞬く間に船は沖合に出て行く。ゼンタが行こうとするのを止める、ダーラント、猟師ら。人々をふりほどいて海に行き、オランダ人に呼びかける。

ゼンタ

命を捨てて、あなたに永遠の貞節を捧げます。

海に身を投げるゼンタ。オランダ人の船は大きな物音を立てて沈没。海中から、抱き合ったオランダ人とゼンタの神々しい姿が現れる。

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