【セビリアの理髪師】簡単なあらすじと相関図

伯爵の従者
静かに、静かに。楽団たちよ、ついてきて。

「静かに、静かに」Piano, pianissimo

楽団ら
ついてきておりますよ。

伯爵の従者
伯爵様、準備は整いました。

ご覧なさい。美しい夜明けが現れましたよ。それなのに、あなたはまだ起きてこないの？どうして眠っていられるの？起きてくれ、私の甘い希望。

「ご覧、空が白み」Ecco, ridente in cielo

伯爵の従者
お嬢さんは窓に顔を見せませんね。

歌も音楽も役に立たないな。さあ、みんなに礼だ。

楽団ら
ありがとう、旦那様。ご厚意と名誉、親切に、感謝だ。あなたはとても立派な人だ。ありがとう。

「ありがとう、旦那様」Mille grazie … mio signore

わかったから、静かにしろ。去ってくれ。従者、お前もしばらく去ってくれ。

私は町のなんでも屋。町の皆さんが私を呼んでいる！

「私は町のなんでも屋」Largo al factotum

あいつはフィガロじゃないか！

旦那様！

静かに。ここでは身分を知られたくないのだ。

ご自由に。なぜセビリアにおいでに？

プラドで美しい娘を見初めたんだが、彼女は引っ越した。それで私はセビリアまで追いかけてきたんだ。その家に住む医者の娘だよ。だが、彼女に近づけないんだ。

あなたは幸運ですよ。私は医者の家に出入りしているのです。床屋や何でも屋として。おや、バルコニーが開くぞ。

私の女神よ、やっと会えた。

なんとか彼に手紙を渡せないかしら。

その紙はなんだ？

歌詞ですよ。「無駄な用心」というアリアの。ああ、紙を落としてしまったわ。下に降りて拾ってきてください。

どこにもないぞ。もういい、お前は部屋の中に入れ。

なんて気の毒な娘だ。フィガロ、お前が彼女の手紙を読め。

「あなたの私への好意に関心があります。私の後見人はこれから出かけるところです。あなたの名前と身分をお知らせください。もはや窓辺に出ることもままなりません。この状況から脱するためにあらゆることをするつもりです。　不幸なロジーナ」

あの後見人は一体何者なんだ。

欲深い老人で、ロジーナの遺産をもらうために、彼女との結婚を狙っているのです。扉が開くぞ。

彼女の願いを叶えよう。ただ、伯爵の身分を知られたくない。彼女には、ありのままの私を愛してほしい。

ご自分で歌でお伝えください。私がギターを演奏するので、さあどうぞ。

もし私の名前を知りたければ、教えましょう。私の名前は、リンドーロ。お金はありませんが、あなたに心を捧げます。

「もし私の名前を知りたければ」Se il mio nome saper voi bramate

（ロジーナの声）ロジーナは、リンドーロに心を…

どんなことをしても、彼女に会いたい！フィガロ、私を今日中にあの家に入れてくれ。褒美に金貨をたくさんやるぞ。

金貨には不思議で万能な効果がある。頭の中にアイデアが湧き出てくるぞ。

「二重唱」All’idea di quel metallo

金貨の効果を教えてくれ。

兵士に変装するのです。連隊の宿泊命令書を利用しましょう。

連隊には私の友人がいるから、なんとかなるな。

そうだ。酒に酔ったふりの兵士になってください。酒に酔ったふりをすれば、あの医者をだましやすいでしょう。

よいアイデアだ。そういえば、お前の店はどこだ？お前に会うには店の場所を知らないと。

左側の15番目で、階段は四段、ショーウィンドウには5つのかつら。そこで、私を見つけられますよ。

リンドーロとの恋をつかんでみせる！絶対に勝利するのよ！私は、素直で従順な娘。本当におしとやかなのよ。でも、私の弱みに触れたら、へびになってやる。やられる前に、罠を仕掛けてやり返す！

「今の歌声は」Una voce poco fa

リンドーロは、フィガロと一緒にいたわ。フィガロはいい人だし、私たちの恋を取り持ってくれるかも。

ロジーナお嬢さん。少しお話したいことが。

ええ、私もよ。でも、バルトロがいるわ。足音がするもの。

フィガロのやつ。いまいましい。

フィガロは感じがいい人ですよ。（怒りで爆発しそう。この老人め。）

ロジーナは私を嫌っている。きっとフィガロのせいだ。

音楽教師（バジリオ）
あなたに警告を持ってきましたぞ。アルマヴィーヴァ伯爵がこの町にいるそうです。ロジーナの秘密の恋人のようですよ。

何とかしないと。

音楽教師（バジリオ）
陰口をばらまいて、アルマヴィーヴァ伯爵を町から追いだそう！

陰口はそよ風のように、ささやかなものから始まります。ですが、次第に大きくなり、嵐のように威力が出るのです。

「陰口はそよ風のように」La calunnia è un venticello

悠長なことを言ってられるか。それよりも、すぐにロジーナと結婚してしまおう。

全部聞いたぞ。ロジーナお嬢さんとバルトロが結婚なんて、とんでもない。

大変です。後見人があなたとの結婚を決意していました。

なんですって！とんでもない勘違い男だわ。先ほど私の窓の下で若い男と話していたわね。

私のいとこです。真面目でいい男で、今恋に落ちているのです。

まあ、どんな女性なの？名前は？

綺麗な人ですよ。その名前は、ロ、ロ、ロジーナです。

それでは、私が幸運な娘なのね！（って私のことだと思っていたわよ。）

「二重唱」Dunque io son

リンドーロが好きなのはあなたですよ。（抜け目のない女の子だ。）

リンドーロと話したいんだけど。

もうすぐあなたに会いに来ますよ。何か彼に手紙を書いてくださいよ。

そんな恥ずかしいことできません。…とか言いつつ、ほら、手紙なら、ここにあるわ。

すでに書いていたとは！俺は間抜けだな。彼女にラブレターの書き方を教えようだなんて。

今日、フィガロと何を話したんだ？

とりとめのない話ですよ。

お前の指がインクで汚れている理由は？紙が一枚足りないぞ。ペン先が尖っているのはなぜだ？

インクはやけどの手当てにつけたのよ。紙は、女中にお菓子をあげるために使ったの。ペンは刺繍の下書きのためよ。

私のような医者を向かって、そんな言い訳をするのか！お前を部屋に閉じ込めてやるからな！

「私のような医者に向かって」A un dottor della mia sorte

笑っちゃうわ。好きなだけ文句を言って、扉を閉めればいいわ。

おい、誰かいないか？

酔っ払いが何の用だ？

あなたが、ドクター・バロルド（ばか）？じゃあ、ドクター・ベルトルド（まぬけ）？わかった！ドクター・バルバロ（野蛮人）？

違う！ドクター・バルトロだ！！お前は誰だ？

私は連隊の兵士だ。宿泊許可証もあるぞ。（愛しい人よ、出てきておくれ。）

（小声で）私はリンドーロです。

（小声で）気をつけてください。

ロジーナは部屋に戻れ。

酔っ払いは出ていけ。

それなら受けて立つ。

一体何の騒ぎだ！通りに人が集まっていますよ。

兵士ら
何の騒ぎだ。説明しろ。

兵士の若造が問題を起こした。

「六重唱」Questa bestia di soldato

宿泊許可証があるのに、私を宿泊させてくれない。

この兵士が私をひどいめに合わせたんです。

兵士
わかった。お前は逮捕だ。

まあ、待て。これを見ろ。

冷たく動かない、まるで彫刻のように。

「六重唱」Fredda ed immobile

凍り付いて動けない。

アハハ。バルトロは彫刻だ。

（兵士に）でも、あなたがた…あの、私は…

兵士ら
何も言うな。黙ってろ！騒動はおしまいだ。

全員
まるで鍛冶屋の中にいるみたい。金槌の音がうるさくて、頭がパンクしそう。何も考えられず、混乱するばかり。

「まるで鍛冶屋の中に」Mi par d’essere con la testa

喜びと平和を！平和と喜びを！（一回目の変装はばれたが、次はうまくいく！）

「二重唱」Pace e gioia sia con voi

どうも、どうも。（この男に見覚えがあるような。思い出せない。）ところで、どなた？

病気の音楽教師の代理で来ました。私は弟子です。

（なんか怪しいな。）それでは、見舞いに行こう。

ちょっと、お待ちを。実は私は、アルマヴィーヴァ伯爵と同じ宿に泊まっています。偶然私はこの手紙を手に入れたのです。

これはロジーナの筆跡。

この手紙を「伯爵がロジーナをもてあそんでいる証拠」として、彼女にみせたらどうでしょう。

お前はやり手だな。

ロジーナからの手紙を、バルトロに渡してしまったが仕方がない。あのままでは追い出されてしまった。後で彼女に説明しよう。

ロジーナ、来なさい。代理でこの音楽教師が来てくれたぞ。

あら！（リンドーロだわ。）それでは「無駄な用心」を歌いましょう。

お前はいつも「無駄な用心」だな。

愛は、真実にして不屈な情熱です。権力でも、打ち砕くことはできません。愛は勝利するのです。リンドーロ、大切な人。私を救ってください。

「真実にして不屈の情熱」Contro un cor che accende amore

心配するな。私を信じなさい。

ロジーナは美しい声だな。だが、このアリアは退屈だ。私が手本をみせてやろう。「お前が側にいると、ロジーナ。私の心の中で、踊る。メヌエットを踊る。」

「お前が側にいると」Quando mi sei vicina

フィガロ、踊りがうまいな。それで、何の用だ？

あなたの髭剃りに来ました。明日から連隊の士官たちや、ご婦人方のかつらなどの仕事があるのでね。

今日は髭を剃りたくない。

私は腕がいいのです。お客がたくさん待っています。今日剃らないなら、別の者に頼んでください。

仕方がないな。

タオルを取ってこい。いや、やっぱり自分で行く。

あの鍵の束にあなたを閉じ込める鍵があるのですか？

一番新しい鍵です。

やっぱり、お前がタオルを取りに行け。部屋で何も触るなよ。

何もしませんよ。すぐに戻ります。（鍵の束をゲットしたぞ。）

あの男なんですよ。伯爵にロジーナの手紙を渡したのは。

ペテン師に見えますね。

やっと二人きりになりました。

他に何も望みません。

よくやったでしょ。この鍵を見て！

ドン・バジリオ！

「五重唱」Don Basilio!

（バルトロに）彼は計画を何も知らないので、追い払いましょう。

バジリオ、体調はいかが？

音楽教師（バジリオ）
体調？

熱があるようですよ。大変だ。

音楽教師（バジリオ）
熱ですって？

体調が悪そうだ。

さあ行って。体を大切にしなさい。

さあ、行ってちょうだい。

音楽教師（バジリオ）
何度も言わないでいいですよ。（なぜ財布が？バルトロは罠にはまったな。）わかりました。行きますよ。

（小声）真夜中、私とフィガロであなたに会いに来ます。鍵を手に入れました。何も心配はいりません。

（小声）あなたをお待ちします。

（小声）あなたの手紙を、私の変装が…

変装だって？！

なんて不幸なんだ。音楽教師のバジリオは何か気が付いているかも。あいつを呼びに行かせよう。

女中
爺さんが妻を求め、娘は夫を求める。恋はみんなを狂わせる。私は老いて、誰にも必要とされないのに。

「爺さんが妻を求め」Il vecchiotto cerca moglie

音楽教師（バジリオ）
私はあの若者の音楽教師を知りませんよ。

それならば、伯爵があの偽物の音楽教師をよこしたのだ。

音楽教師（バジリオ）
いいえ、あの男が伯爵ですよ。ほら、彼に渡された財布に紋章が付いています。

こうなったら、今夜中にロジーナと結婚してやる。公証人が必要だ。お前が公証人を呼びに行ってくれ。

ロジーナと絶対結婚してやる。そうだ、この手紙を利用すれば！

この手紙を見ろ。お前の手紙だろう。フィガロとあの音楽教師は、伯爵にお前を売ろうとしているのだよ。

なぜ私の手紙が！（リンドーロが私をだましたのね。）いいわ、あなたと結婚するわ。でも、真夜中に、卑劣な男とフィガロが一緒にここに来ます。彼らは、扉を開ける鍵を持っています。

それなら、私は警察を呼びに行く。

不誠実な男！帰って。信じた私がバカだった！私を伯爵に売るつもりなのね。リンドーロ、あなたを愛していたのに。

私の名前はリンドーロではなく、アルマヴィーヴァ伯爵だ。

なんて意外な展開でしょう。

なんという思いがけない勝利だ。

大変だ。誰かやってくる。

バジリオと私が予約した公証人がいるぞ。これならうまくやれそうだ。

（公証人に）あなたは、アルマヴィーヴァ伯爵と私の姪との結婚契約書を結ぶ予定でしたよね。書類はお持ちで？

音楽教師（バジリオ）
ドン・バルトロはどちらに？

お前にこの指輪をやろう。反対すれば、私には銃があるぞ。

音楽教師（バジリオ）
指輪をいただきます。

結婚の証人は、フィガロとドン・バジリオだ。

彼らは泥棒です。捕まえてください。

法務官
あなたの名前は？

私はロジーナの夫であり、アルマヴィーヴァ伯爵だ。

でも、私は…

もう逆らうのをやめろ。

要するに、私の負けか。だが、お前が裏切るとは。

音楽教師（バジリオ）
伯爵は、私を黙らせる術をお持ちで。

持参金はないぞ。

持参金はいらない。お前にやろう。

バルトロ、俺はあんたの笑顔を見たよ。さあ、二人を祝福だ。この素晴らしく幸せな結びつきを心に留めておきましょう。

「この素晴らしく幸せな結びつきを」Di sì felice innesto

ため息と苦しみの引き換えに、幸福な瞬間を得たのね。

リンドーロの情熱があなたに受け入れられたのだ。より美しい運命があなたに待っているでしょう。

合唱
愛と永遠の誓いが二人の中で続きますように。